» 2015 » 10月のブログ記事

「ブタのように食べる」という表現は、普通はいい意味では使われない。
ブタと言えば「汚い」という印象を持たれがちだが、ブタの仲間であるイノシシの中には食べ物を洗ってから食べるきれい好きがいることが、英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとスイスのバーゼル動物園の研究により分かったそうだ。
実験の対象となったイノシシたちは、食べ物が汚れているかいないかを判断でき、汚れていればすぐにはかぶりつかず、きれいに洗ってから食べていた。イノシシは環境に順応する能力が高い知的な動物だが、食べ物を洗う様子が確認されたのはこれが初めてで、学術誌「Animal Cognition」に発表された。
食べ物を水に浸して揺するような動作をする動物には、このほかにもアライグマ、鳥、サルの仲間などがいる。しかしこうした動物たちは本当に食べ物を洗っているとは限らない。一部の鳥は食べ物を水で湿らせるが、それは単に飲み込みやすくするためだ。アライグマは水中に手を入れてくるくると回すことがあるが、この動作は手で水中の様子を確認し獲物を探すためであって、食べ物を洗っているわけではないそうだ。
動物が本当に食べ物の汚れを落とそうとしているか判断するには、その動物が食べ物がきれいであるか、泥が付いているかを見分けて汚れたものを水辺へ持って行くか確認する必要がある。
実験中、イノシシたちは常にきれいなものしか食べなかったわけではないという。朝に食べ物をもらえなかった場合、彼らはまず砂のついたリンゴを洗わずにいくつかむさぼり食べ、その後で残りを水辺まで運んでいった。また、トウモロコシやテンサイと言った好物は洗わずに食べてしまったそうだ。
泥だらけになるのを好むブタが、食べ物の汚れにこだわるのはなぜなのか。おそらく砂の味や感触が苦手だからだろうと研究者たちは考えている。また、砂が長い間口に入っていると歯が削られる恐れがあるため、砂を落とすことによって口を守ろうとしているという可能性もある。
この行動が始まった原因や過程がどういうものだったにせよ、今回の実験結果でイノシシが清潔な食べ物と汚れた食べ物を明確に区別することができ、またそれを水辺まで持って行って洗うまで食べる楽しみを先延ばしにできることがはっきりと証明された。こうした研究によってイノシシがどれほど特別な動物かということが認識されれば保護にもつながる。世界では15種ほどのイノシシの仲間が絶滅の危機に瀕しているという。うち数種は絶滅寸前という状態で、注意深く見守っていく必要がある。これからは考えを改め、イノシシは実は繊細な動物だという認識を持った方が良いのかもしれない。